業務用エアコンのフロン点検義務とは?簡易点検・定期点検の頻度と記録の保存方法を解説

オフィスや店舗、工場に業務用エアコンを設置している事業者の方から、「フロン排出抑制法の点検義務があると聞いたが、何をすればよいのかわからない」というご相談をよくいただきます
業務用エアコンの所有者や使用者は、法律上「管理者」にあたります。管理者には、機器の点検や記録の保存など、守らなければならない義務があります。知らないまま放置すると、冷媒の漏えいによる空調効率の低下や修理費の増大につながるおそれがあります。
この記事では、環境省などの公式情報をもとに、業務用エアコンの点検義務の内容、点検頻度、記録の保存、廃棄時の注意点を整理します。
フロン排出抑制法とは?管理者に求められる役割
フロン排出抑制法は、フロン類の大気への排出を減らすための法律です。フロン類は、業務用のエアコンや冷凍冷蔵機器の冷媒として広く使われてきました。
一方で、大気中に出ると地球温暖化に影響を与えます。そのため、機器の使用段階から廃棄の段階まで、一貫した管理が求められています。
対象となる機器は「第一種特定製品」
環境省の資料では、第一種特定製品は「業務用の空調機器(エアコンディショナー)及び冷凍冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているもの」とされています。詳しくは、環境省のフロン排出抑制法に関する資料で確認できます。
事務所のパッケージエアコン、店舗の天井カセット型、ビルの空調設備、冷凍冷蔵ショーケースなどが該当します。
管理者とは誰のことか
管理者とは、原則として対象機器の所有者です。リース契約などの場合は、契約内容によって使用者が管理者になることもあります。
テナントビルでは、オーナーとテナントのどちらが管理者なのかが曖昧になりがちです。トラブルを防ぐため、契約書や管理規約で管理者を事前に確認しておきましょう。
管理者が守るべき義務の全体像
環境省のフロン排出抑制法の概要ページによると、管理者の主な義務は次のとおりです。
- 設置・使用環境の維持保全を行うこと
- 簡易点検と定期点検を実施すること
- 漏えいや故障が確認された場合は、修理するまでフロン類を原則として充塡しないこと
- 点検・整備の記録を作成し、保存すること
- 一定量以上のフロン類を漏えいさせた場合は、国へ報告すること
- 廃棄時は、第一種フロン類充塡回収業者へ引き渡すこと
特に日常業務に関わるのが、点検と記録の2つです。
次の章で詳しく見ていきます。
簡易点検の内容と頻度
簡易点検は、すべての第一種特定製品が対象で、3か月に1回以上行う必要があります。なお、すでに冷媒を回収済みの機器は対象外です。
簡易点検の実施者に資格の制限はなく、施設の担当者が自社で行えます。
簡易点検で確認する項目
環境省の資料では、確認項目として次の内容が挙げられています。
- 機器内部の温度
- 熱交換器への霜の付着
- 油のにじみやシミ
- 腐食や損傷
- 異常な音や振動
難しい作業ではありません。
ただし、天井裏や屋上にある機器は、安全に確認できる体制づくりが必要です。簡易点検の記録には、設置場所などの基本情報、実施日、実施の有無を残します。
定期点検の対象と頻度
定期点検は、一定規模以上の機器が対象です。専門的な知見を持つ人が行う、または立ち会う必要があります。
対象の区分と頻度は、環境省の管理者向け資料に次のように示されています。
| 機器の区分 | 定格出力 | 定期点検の頻度 |
|---|---|---|
| 空調機器 | 50kW以上 | 1年に1回以上 |
| 空調機器 | 7.5kW以上50kW未満 | 3年に1回以上 |
| 冷凍冷蔵機器 | 7.5kW以上 | 1年に1回以上 |
この出力は、機器の銘板に記載された圧縮機の定格出力で確認します。
静岡県のフロン排出抑制法の案内ページでも、不明な場合はカタログやメーカーに問い合わせるよう案内されています。
7.5kW未満の空調機器は、定期点検の対象外で、簡易点検のみが必要です。
漏えいが見つかったときの正しい対応
点検で冷媒の漏えいや異常が疑われる場合の対応は、とても重要です。
漏えいや故障が確認されたときは、修理をしないまま冷媒を充塡することは原則として禁止されています。
冷媒が減ったからといって補充を繰り返すと漏えいを放置することになり、法令違反になるだけでなく、冷媒代の負担も増えていきます。
漏えい箇所を特定し必要な措置をできるだけ早く行うことが大切です。
点検記録簿の作り方と保存期間
点検や整備を行ったら、機器ごとに記録を残します。記録には、点検・修理・充塡・回収の履歴を含めます。紙でも電磁的記録でも構いません。
記録の保存期間は、機器を廃棄するためにフロン類を引き渡した日から3年間です。機器の使用期間が長いほど、記録も長く残すことになります。
整備を依頼するときは、整備者へ記録簿を見せる必要があります。機器を売却・譲渡する場合は、記録簿またはその写しを相手に渡します。記録の様式は、JARAC(日本冷凍空調工業会)などが公開するひな形を参考にできます。
漏えい量の報告と廃棄時の注意点
算定漏えい量の報告
1年間(4月1日〜3月31日)の漏えい量がCO2換算で1,000トン以上になった事業者は、翌年度の7月末日までに国へ報告する必要があります。
多数の拠点で機器を保有する事業者は、拠点ごとの漏えい量の集計体制を整えておくと安心です。
廃棄時は行程管理が必要
業務用エアコンを廃棄するときは、都道府県に登録された第一種フロン類充塡回収業者に、冷媒の回収を依頼します。
回収の流れは行程管理票(回収依頼書、委託確認書、引取証明書など)で管理されます。
引取証明書は、3年間の保管が必要です。
冷媒が入っていない可能性がある場合は、確認証明書を3年間保管します。また、廃棄物業者へ機器を渡すときは、引取証明書または確認証明書の写しを渡します。
なお、フロン類をみだりに大気中へ放出すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります。入れ替え工事の際は、必ず登録業者に任せましょう。
自社で管理するときの実務ポイント
- まず、設置している機器をすべて洗い出し、台帳にまとめる
- 銘板で定格出力を確認し、定期点検の対象かどうかを判定する
- 簡易点検の担当者と、3か月ごとの実施日を決める
- 定期点検の対象機器は、年間の点検スケジュールを設備業者と取り決める
- 点検記録簿を機器ごとに作り、保管場所と期間をルール化する
機器の台数が多い施設ほど、台帳づくりが管理の出発点になります。
更新時期が近い機器は、点検結果をもとに更新計画を立てると、突然の故障による営業停止を避けやすくなります。
まとめ
業務用エアコンの管理者には、3か月に1回以上の簡易点検、機器の規模に応じた定期点検、点検記録の作成と保存が求められます。
漏えいが見つかったときは、修理前の充塡を避け、廃棄時は登録業者による回収と行程管理を行う必要があります。
義務の内容は一見複雑ですが、機器の洗い出しと点検スケジュールの整備から始めれば、無理なく進められます。
オーソリティー空調では、空調設備・換気設備・設備工事の専門家が、点検のご相談から修理、更新工事までサポートしています。
自社の機器が点検対象かどうか知りたい、点検体制を整えたいという方は、お気軽にお問い合わせください。



