事務所の空気環境は法令基準を満たせている?CO2・温度・湿度の基準値と測定義務、空調設備の改善ポイントを解説

「うちの事務所は換気も空調も使っているけれど、法令の基準を満たしているのか分からない」
「夏は冷えすぎ、冬は乾燥すると従業員から指摘されるが、何を直せばよいのか判断できない」
こうした悩みを抱える総務・施設管理のご担当者様は少なくありません。
事務所の空気環境には、労働安全衛生法に基づく省令や建築物衛生法で定められた基準があります。基準値や測定の頻度を知らないまま運用していると、気づかないうちに基準を外れている可能性があります。
この記事では、空調・換気設備の専門会社の視点から、基準値の整理、測定の考え方、設備面での改善ポイントを解説します。
事務所の空気環境に関わる2つのルール
事務所の空気環境に関係する主なルールは、事務所衛生基準規則(事務所則)と建築物衛生法の2つです。
どちらが適用されるかは、建物の規模や用途によって異なります。
事務所衛生基準規則(事務所則)
事務所則は、労働安全衛生法に基づく省令で、事務作業に従事する労働者が主として使用する建築物の事務所に広く適用されます。
空気環境の基準や測定の義務は、厚生労働省が公開している事務所衛生基準規則の資料にまとめられています。小規模な事務所でも対象になりうるため、延べ面積が小さいから関係ないとは言い切れません。
建築物衛生法(建築物環境衛生管理基準)
建築物衛生法は、延べ面積3,000㎡以上の事務所・店舗・百貨店などの「特定建築物」を対象とする法律です。空気環境の調整基準や測定頻度は、厚生労働省の「建築物衛生行政の最近の動向等について」に示されています。
学校は小学校・中学校などで8,000㎡以上が対象となります。
なお、ここで紹介する数値は、前述の厚生労働省の公開資料に基づいています。
法令は改正されることがあるため、実際に運用する際はe-Gov法令検索などで最新の条文を確認してください。
空気環境の基準値を一覧で確認
建築物衛生法の管理基準(居室)と、事務所則の基準を比較すると次のとおりです。
事務所則の数値には、室内の基準と供給空気の基準が混在している点に注意が必要です。
| 項目 | 建築物衛生法の管理基準 | 事務所則の基準 |
|---|---|---|
| 浮遊粉じん | 0.15mg/m³以下 | 供給空気中で0.15mg/m³以下 |
| 一酸化炭素 | 10ppm以下(外気が10ppm超の場合は20ppm以下) | 室内50ppm以下、供給空気10ppm以下 |
| 二酸化炭素 | 1,000ppm以下 | 室内5,000ppm以下、供給空気1,000ppm以下 |
| 温度 | 17℃以上28℃以下 | 空調設備がある場合は17〜28℃が努力目標 |
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 | 空調設備がある場合は40〜70%が努力目標 |
| 気流 | 0.5m/s以下 | 0.5m/s以下 |
二酸化炭素濃度1,000ppmが、換気が足りているかどうかの分かりやすい目安になります。
二酸化炭素そのものが直ちに健康被害を起こす濃度というより、人の呼気による汚れが室内にたまっていないかを示す指標として使われます。
会議室や執務室の人が多い時間帯に、数値が1,000ppmを超えていないかを確認すると状況をつかみやすくなります。
測定の頻度と記録の保存
基準値を守るには、定期的な測定が欠かせません。
建築物衛生法では、浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・温度・相対湿度・気流を2か月以内ごとに1回測定する必要があります。
ホルムアルデヒドは、建築や大規模修繕などの後、使用開始後に最初に到来する6〜9月に1回の測定です。
事務所則でも、一酸化炭素と二酸化炭素は2か月以内ごとに1回の定期測定が求められます。室温と相対湿度は、前年1年間の状態が基準内で今後も続くと見込まれる場合、季節ごとの測定に減らせる規定があります。
測定記録は日時・方法・箇所・結果などを残し、3年間保存します。
- 測定は室の通常使用時間中に、室の中央部の床上75〜120cmで行う
- 一酸化炭素・二酸化炭素は検知管方式の測定器、温度・湿度・気流はそれぞれ所定の測定器を使う
- 測定結果は、改善措置の内容とあわせて記録に残す
基準を外れやすい空調・換気のトラブル例
基準から外れる原因の多くは、設備の能力不足や劣化、運転設定の見直し不足にあります。
現場でよく見られるケースを整理します。
ケース1:二酸化炭素濃度が午後に高くなる
在室人数が増える会議室や、レイアウト変更で人が増えた執務室では、設計時より換気量が不足することがあります。
全熱交換器のフィルター目詰まりや、外気取入れダンパーの動作不良が隠れた原因になっている場合も多くあります。こうした場合は、風量測定や点検で原因を切り分け、必要に応じて換気量の増強や機器の更新を検討します。
ケース2:夏の冷えすぎ・冬の乾燥
冷房時は、室温を外気より著しく低くしないことが求められています。
設定温度を下げても場所によって暑さと寒さが混在する場合は、吹出口の配置や気流の偏りが原因かもしれません。冬の乾燥は、加湿器の能力不足や給水系統の不具合で湿度が40%を下回るケースがあります。
ケース3:気流が強く、特定の席に風が直接当たる
気流は0.5m/s以下が基準で、空調の風が特定の人に継続して直接当たらないようにすることも求められます。
席替えで吹出口の真下に人が座るようになった場合は、風向板の調整や吹出口の変更で改善できることがあります。
設備の更新・改修を検討すべきサイン
測定で基準を外れることが繰り返される場合は、運用改善だけでは限界があるかもしれません。
次のようなサインがあれば、設備の診断や更新を検討するタイミングです。
- 季節を問わず、特定のエリアで温度や湿度の苦情が続く
- 二酸化炭素濃度が、人の多い時間帯に1,000ppmを超えやすい
- 空調機から異音・水漏れ・異臭が出ている
- 設置から長い年数が経ち、部品の供給や修理対応が難しくなってきた
- レイアウト変更や増員で、設計当時と使い方が大きく変わった
更新を検討する際は、単純な同型機への入れ替えではなく、現在の人員・用途に合った換気量と空調能力を見直すことが重要です。
省エネ性能の高い機器へ更新すれば、快適性の改善とランニングコストの削減を両立できる場合もあります。
まとめ:測定と点検から、できることを始めましょう
事務所の空気環境には、二酸化炭素1,000ppm、温度17〜28℃、相対湿度40〜70%といった基準があります。
2か月以内ごとの測定と記録の保存を習慣にし、数値の変化から設備の不具合を早めに見つけることが大切です。
「測定結果が基準を外れている」「設備が古くなり不安」「どこから手を付ければよいか分からない」という場合は、空調設備・換気設備・設備工事の専門会社である当社へにお気軽にご相談ください。
現地の状況を確認したうえで、最適な点検・改修プランをご提案します。



